2008年08月11日
アメリカ素描 (新潮文庫)
司馬 遼太郎

定価: ¥ 660
販売価格: ¥ 660
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発売日: 1989-04
発売元: 新潮社
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アメリカ文明論
昭和60年頃に読売新聞に連載された司馬遼太郎のエッセイである。
新聞社の依頼で初めて米国へ行った旅行記であるが、「司馬遼太郎のアメリカ論」になっているところが、きわだっていた。
25年前の旅行記だったので、時代遅れでつまらないのではないかとおそるおそるという感じで読みはじめたが、そんなことはなくてたいへん面白かった。
司馬遼太郎の筆力はたいしたもので、少し前の時代の映画を観ているような臨場感がある
アメリカの風景を映した映画を観ながら(観るようにして)、司馬遼太郎のアメリカ文明論を聞くのは楽しい。
日本や、アジアについては詳しいし、もちろん旅行も何度もしている司馬遼太郎であるが、ことアメリカに関してはまっさらの状態だった。
と、彼自身が書いているとおり、1回目の旅行記はおずおずとした雰囲気から始まった。
司馬遼太郎は、楽しげに軽やかに旅を重ねながらもアメリカというモノをしっかりと観察をし、旅行が終わる頃には「アメリカ文明」についてしっかりした枠組みをこしらえて、読者に見せている。
「アメリカ素描」には2回の旅行記が収録されているが、2回目の旅は司馬の仮説「アメリカ文明」を検証するスタンスで書かれているように思った。
「アメリカ文明」と打って出たところが面白い。
ええ?アメリカ文明かよ、でしょう? たかだか300年の歴史しかない国について、これを文明と定義している。
私は若い頃に森有正に夢中になっていた時代があったが、彼が欧州文明に押しつぶされそうになりながら書きあげた悲痛な欧州文明論とは対照的である。
文明の国での文化探訪
普遍性をもつ文明の一枚皮でできた人工の国アメリカに対する司馬遼太郎の文化探訪。
契約でできた人工の国アメリカに司馬がいった2年後にアメリカに法律を学びに行ったが、その時のアメリカ感はアメリカ人は歴史に憧れているという印象であったが、本書を読むとその感覚はむしろ文化に対するものではないかという事がわかった。
ただし本書でも繰り返し述べられている様にアメリカの凄さは、その文明のあり様が十年単位ぐらいで変わっていくことだ。現在のアメリカは司馬が見たものと変わっているだろうし、同時多発テロ後ではさらに変わってしまっているだろう。しかし、司馬がこころみた様にアメリカを白地図にものを考える作業はいつの時代には必要な事で、そのよき手助けになる本である。
アメリカの文明と文化をめぐる、司馬遼太郎の意欲作。
司馬遼太郎はフィクションを作る小説家であるので、彼の史学者としての専門的な能力については、その文才ほどではないというところがあるのは周知の事実である。
むしろ彼が長けていたのは、史実の隙間にフィクションの可能性を見つけ、それを再構成する能力であるように思える。
アメリカの西海岸と東海岸をたったの40日間だけ見て回った彼は、アメリカという舞台でそれを試み、それなりにアメリカの本質らしきフィクションを抉り出すことに成功している。
両海岸地域しか訪れていないために、極めて薄っぺらな本質ではあるが。
アメリカの文明と文化をめぐる、司馬遼太郎の意欲作。
一つの文明論・国家論・文化論として読むと中々興味深いだろう。


